自治体でのホスピタリティ「何のため」にやるのですか?

講演会に10年ぶりくらいの釧路です。

今回は自治体におけるホスピタリティについてお伝えします。

民間と自治体におけるホスピタリティ戦略の最も大きな違いは、提供するべき対象です。民間は目の前にいる顧客が対象ですが、自治体はそれに加えて住民、それも遠い「未来の住民」も対象になるということです。

私は自治体でホスピタリティ向上の為の、観光まちづくりのセミナーやワークショップを行っています。その時、職員の方に多く訊かれるのが、「来年道の駅を作るのですが、成功させるには、どうしたら良いですか?」「ウチの街にインバウンドを呼びこむには、何をするべきですか?」等といった、「◯◯をやりたいから」「◯◯をやるためには」どうしたら良いか、といった質問です。

私はその都度、逆に問いかけます。「何のために、あなたの街に道の駅を作るのですか?」「何のために、インバウンドを呼ぶのですか?インバウンドが来ると、あなたの街はどうなりますか?」すると、質問された方の多くは、黙ってしまいます。

「どうしたら良いか?」「何をするべきか?」これらは要するに、「手段」への質問です。どうしても現代社会に生きる我々は、効率良く業務を進め、より高い成果を出すために、「手段」に対する「答え」を、すぐ欲しがる傾向にあるようです。しかし、「手段」のみを考え、答えを知ると弊害が起きます。真似してしまうのです。

例えば、最近の道の駅のほとんどが、判で押したように産直市と焼き立てパン(かピザ)、そしてソフトクリームとワンパターン化されているのは、その典型だと思います。勿論、産直市自体がダメな訳では無いですし、鹿部町など素晴らしく独創的なところもあります。

言いたいのは、安易に他自治体の成功した「手段」を真似した所で、提供すべき価値(地域資源)が違う筈です。マーケティングの世界では、いくら成功例を真似しても、競合と差別化できないと勝てません。だから、赤字の道の駅が沢山あるのです。それは未来の住民へのホスピタリティを損ねる行為でしかありません。

私が「手段」より重要だと思っていることがあります。それが「何のために」=「目的」です。因みに「目的」の私なりの定義は、最終的に目指す方向で、獲得したい「価値」のことです。

例えば、皆さんの役場で新しい部署ができたとしましょう。「さて、この部署は何やろう?」とはなりませんよね。必ず先に「◯◯のために」という「目的」があるから、新しい部署を設立するわけです。新しい部署を作ったことが「手段」です。全ては「目的」が先なのです。

しかし、残念ながら人間は「目的」をつい忘れがちになります。散見される例として、本来、住民のための事業という「目的」で、実行する「手段」の一つである補助金の筈が、補助金を貰う事が「目的」で事業を行う「手段が目的化」するケースです。

地方創生の補助金バブルもインバウンドブームも、いつ突然終わるか分かりません。他自治体の既存成功例やテクニックなどの「手段」ばかりに囚われず、自分たちの行う事業が「何のために」なのかを、最初にしっかり決めるべきだと思います。その決めた「何のために」を、「手段」の段階でも、常に意識して実行する。それが、「未来の住民」に対してのホスピタリティに繋がると思うのです