ホスピタリティを深める対話術〜AI手法と傾聴の力

留萌はホスピタリティを考える「応用編」

2025年最初の出張研修は、昨年末にお伺いした留萌の道の駅です。

昨年12月に行った研修では、接遇の基本マナーを中心にお伝えしました。挨拶や身だしなみ、言葉遣いといった基礎は、接客業における土台です。

しかし今回は、その先にある「ホスピタリティ」についてお話ししました。
ホスピタリティとは、お客様がサービスを受けた際、その体験をどれほど豊かにできるかです。

具体的に言うと「お客様が何を求めているか」を察知する力や、自発的に行動する姿勢は基本以上に大切になります。

まず普段行っているサービスとホスピタリティの違いを、ゲームで体験して頂きました。

ホスピタリティを理解して頂いた上で、必要な基礎スキルお客様とのコミュニケーション、特に「みる」「きく」をワーク中心に学んで頂いたのです。

特に「きく」為に大事なスキル「傾聴」をしっかり取り組みました。

接客時の何気ない対話からお客様が何を望んでいるかを推測し、言われる前に行動に移すのがホスピタリティ。

そのためにはお客様の話を(心の声まで)しっかり「きく」=傾聴することです。

だから、マニュアル以外の対話が重要なのです。

今回も前回同様、皆様全員終始真剣に取り組んで頂き、具体的なケーススタディにおいても積極的に意見を交わしていただきました。

こうした姿勢が現場に持ち帰られ、継続され、組織風土になることでしょう。

豊富温泉にてヒアリング

研修後は、翌日の研修準備のために、車で約3時間かけ豊富温泉の宿へ移動しました。

ご存知の方も多いかもしれませんが、豊富温泉はその特異性で全国的にも有名です。

特有の油分を含む温泉は「奇跡の湯」とも言われ皮膚病への効果も高いとされ、全国からアトピーに悩む方たちが訪れます。

この宿でもかけ流しで素晴らしいお湯が堪能出来ます。

食事は地元の食材を多く使い、それぞれ工夫が施してあって、とても美味しいものでした。

特にエゾ鹿のシチューが素晴らしかったです。

夕食後、まず社長ご夫妻とのヒアリングを行い、経営における課題を整理しました。

その中で見えてきたのは、スタッフと経営者の間で認識のズレがある点です。

ホスピタリティマネジメントで重要なことは、

進むべき方向(目的・ビジョン・ミッションなど)を組織のメンバー全員に共有浸透すること。

目指す姿(何のために?)が無いと、「仕事」ではなく「作業」になってしまいます。

するとスタッフのモチベーションは下がり、離職率が高くなってしまうのです。

私はこれを重要視し単純な研修の形ではなく、社長と従業員の皆様との「対話の場」が解決の糸口になると考えました。

ホスピタリティの向上は、現場の皆様の主体性があってこそです。

この対話の場を有効に活用するための仕組みを設計しました。

AI(Appreciative Inquiry)手法を用いた理念の共有

翌日の研修では、まず簡単なCS(顧客満足)の仕組みを理解して頂きました。

CSは単なる目標ではなく、具体的な行動計画として落とし込まれなければなりません。

その後に社長ご夫妻と従業員の方との対話を行いました。

ここで採用したのがAI(Appreciative Inquiry)という手法です。

この手法は問題解決型ではなく、「強み」に焦点を当てた未来志向のアプローチです。

特徴として「組織の強みにフォーカスする」アプローチで、ポジティブな視点を重視します。

そのため 離職率が高い場合にもモチベーションが上がる話し合いがしやすいというメリットがあるのです。


AI手法の具体的な流れは以下の通りです:

  1. 発見(Discover):何が上手くいっているのか、現状の強みを明確化します。
  2. 夢(Dream):その強みを基に、「理想的な未来」を描きます。
  3. 設計(Design):その理想を実現するためのプロセスや仕組みを考案します。
  4. 実現(Destiny):計画を実行に移し、理想の未来を現実にしていきます。

この手法は、対話を通じて全員が前向きになれる点です。

問題だけを議論すると、どうしても否定的な雰囲気に陥りがちですが、AIでは「成功体験」や「強み」に着目するため、参加者のモチベーションが高まりやすいのです。

私がファシリテーターとして壁に貼った模造紙に発言の要旨を書きながら進行することにしました。

テーマは「経営理念の共有と目指す理想の姿の具体化」です。

まず話題提供として社長夫妻から、それぞれ経営理念への思いを語って貰いました。

そしてアイスブレイク代わりに、改めて参加者全員の自己紹介です。

次に対話でのルールを説明。

他人の意見を否定しない等幾つかのルールを承知して頂きました。

対話の進行は以下の通りです:

  1. 「旅館の目指す姿や理念を聞いて、どんな感想を持ちましたか?」
    • 初めて社長が経営理念を熱く語ったことで、スタッフの意識が変わるきっかけとなりました。
  2. 「この施設の『宝』は何ですか?」
    • 接客、食事、温泉など、施設の誇れる要素を全員で洗い出しました。
  3. 「その『宝』から理想の姿を実現する可能性と課題は?」
    • 施設の強みを活かしながら、改善すべき点を明確にしました。
  4. 「5年後、この施設が地域やお客様にとってどうなっていたら最高ですか?」
    • 長期的なビジョンを全員で共有しました。
  5. 「この未来像を実現するために明日から何ができるか?」
    • 具体的な行動計画を考えました。

最後に「今日の話し合いで感じたこと」を共有し、振り返りを行いました。

研修の成果と今後の展開

研修と対話終了後、参加者の皆様から非常に前向きな意見が寄せられました。特に若手スタッフの一人は、「自分たちがこの旅館の未来をつくれるという実感が湧いた」と語ってくれました。

これこそがAI手法の醍醐味です。

自分の役割が経営理念とつながっていると実感できることで、スタッフ全体の士気が向上します。

この日、旅館の未来像を共有した時間が、確実に次の一歩への原動力になったと感じています。

ホスピタリティの本質は「対話」にあります。

接遇の基本を磨くだけでなく、お客様とのコミュニケーション、組織内での良質な対話を促進することで、サービスの質は飛躍的に向上します。

皆様の現場でも、ぜひ「傾聴」と「AI手法」等(手法は沢山あり)を活用し、前向きな対話を生み出してください。