
先日、数年ぶりに上士幌町ぬかびら源泉郷にある温泉宿「中村屋」に宿泊してきました。外観は古びていますが、普段私が宿に対して、「やってほしい」と思っているホスピタリティがほとんど行われている、道内でも数少ない宿です。それは接遇における人的ホスピタリティだけではありません。ほんの一部ご紹介したいと思います。
木の温もりを感じさせるモダンな部屋は地元産木材を使い、宿主家族の手で作られています。ルームキーはひねると「キュッキュッ」と音が鳴りバードコールに。
時折鹿が遊びに訪れる源泉かけ流しの露天風呂には、星が見やすいよう、押している間だけ照明が消えるスイッチ「星釦」があります。天気が良ければ満天の星が見られるのです。
食事は殆どが地元産の食材です。出て来る食材は何処の誰が作ったのか、全ての一覧を掲示しています。それを見ているだけでも、食欲が沸き、味がワンランク上に感じるものです。箸は部屋を作った時の端材です。
極めつけは「エゾリスの穴」という部屋。旅先であったらいいなと思えるグッズが、これでもかと集められています。アメニティグッズから、スノーシューや星座早見盤、果てはお香まで幅広く用意されていて、自由に利用できるのです。滞在中何をしようかワクワクしてきます。
学ぶべきポイントは、どれもが自分たちでアイディアを考え、自分たちの手で実現していることです。中村屋は、観光のトレンドが個人客に推移するなかで経営が悪化、大工さんを雇うお金が無く、最初仕方なく自分たちで改装を始めたそうです。しかし、結果的には、それがお客様と真摯に向き合うキッカケになりました。
お客様のため何をすべきかを考え、実際やってみて、反応を見て、本当のホスピタリティが分かったのです。お金が無くても(無いからこそ)一生懸命知恵を出し、自分たちで行動し実現することの重要性は、自治体業務にも通じるのではないでしょうか?
もう一つポイントがあります。お客様のターゲットが明確だということです。国内の少人数の個人客に絞られています。誰にでも満足を与えようとすると、誰にとっても中途半端になります。私もホテル勤務時代、幅広いお客様を満足させようとして、痛い思いをした経験を何度もしています。中村屋で言うと、沢山の仲間とワイワイ賑やかに過ごしたい人、北海道は海老とカニ!という人には恐らく評価が低いことでしょう。
だから「自分たちのお客様は誰なのか?=ターゲット」これを最初に考える事が大事なのです。これは、交流人口政策でも全く同じです。
その為には、昨今自治体で頻繁に行われている、「自分たちの資源や強みは何なのか」を見つけるのと同じく、「見つけた資源や強みは誰とマッチングするのか?」を調べ考える必要があります。国内客かインバウンドか?インバウンドなら中華圏なのか欧米系なのか?団体客なのか、個人客なのか?メイン年代は?等なるべく絞り込むことです。ターゲットを決める事で、行うべきホスピタリティ政策、開発すべき商品やデザイン、情報発信法も変わる筈です。マーケティングで一番危険な、お客様ニーズとのミスマッチが防止できるのです
残念ながら北海道の観光まちづくりにおいて、明確にターゲットを打ち出している地域はあまりない様な気がします。「全員に伝えようとすると誰にも伝わらない」、これを念頭に、まず「お客様は誰なのか?」を探ること。そこから地域のホスピタリティ戦略が始まると思います。


